うちが海外のナラティブ志向の強いRPGを紹介するとき、ルール名やその略称っぽいものを書き添えていることがよくあります。PbtAとかBoBとかFate Coreあたりですね。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
言われてみれば、概要をまとめて説明したことはなかった気がしてきましたので、このスレッドに簡単に特徴をまとめていこうと思います。
Fate Core
『Fate Core』
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
PL主導で物語を作って行くスタイルの汎用ルール。1990年代のFudgeというルールをベースに独自進化を遂げた。現在は本体ルールやその簡易版(FAE)が無償配布されている。
DIYな使い方をする時は、ツールキットを組み合わせて、自由に自前のシステムを構築可能。https://t.co/q9X59WawWc
一方、Fate Coreを作ったEvil Hatからは、このルールを用いた特徴的なシステムも販売されている。人気小説原作の『Dresden Files RPG』、クトゥルーミーツターミネーターな『Fate of Cthulhu』などがその代表。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
また、50~60ページのワールド設定が実質無償で大量に提供中。https://t.co/pQFYmY5rqD
オープンライセンスなので、自作したものを配布/販売することもできます。クリエイティブ・コモンズとOpen Game Licenseのどちらでも扱えます。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
それもあって、サードパーティー発のタイトルもそれなりの数、DriveThruRPGなどに並んでます。https://t.co/9NhYUv9Afb
ルール的な特徴は:
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
・アスペクトと呼ばれる自由記述項目で、キャラクターを個性づけ、それを用いて有利/不利な状況を描く
・行動の成り行きは6~20種類程度(システムによる)のスキルで決める
・「+」「-」「 」が2面ずつの6面体ダイスを4つ使用
・スタントという特殊能力をかなり自由に設定できる
・アスペクトはキャラクター以外にも、シーンの状況を描くのにも用いられ、PCもそれを作成/活用できる
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
・アスペクトを不利に使うと運命点がもらえ、有利に使うと運命点を消費することでボーナスや振り直しが行える
・よって、運命点のやりくりで、GMだけではなくPL側から物語に起伏が生まれる仕掛け
とにかくキャラ記述の自由度が高い。アスペクトに記述されていることは卓で共有されるフィクション内では事実となり、かつ運命点の獲得や消費に絡むから、キャラクターの設定が卓で進行する物語に自然と取り込まれることになる。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
抽象的なルールで、派手なアクションものを遊ぶのに向く印象。
『Fate Core』については、コアルールの翻訳を渋禽さん( @Sibkin_astr_jf )が作成されているとのことなので、興味あれば聞いてみてください。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づき、そのうちに公開されるのではないかと期待してます。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
2.Powered by the Apocalypse
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
2011年の作品『Apocalypse World』のルールを採用したシステム群。略してPbtA。別名はApocalypse World Engine。
ハック作成は「ルールを用いたシステムの配布/販売は自由、テキストをそのまま使う場合は要連絡」とゆるく、採用システムは多数。https://t.co/ZxPrVPvZOS
2010年代の英語圏インディーズRPGシーンで、おそらく最も影響の大きかったシステムであり、「プレイヤー主導で展開するGMにすら予測不能な物語、会話や質問を通しての卓で共有されるフィクションと世界の構築」のためのテクニックを、ルール、プレイ手法、GMの運用方法に盛り込んだデザイン。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
『Apocalypse World』は、人類文明崩壊から半世紀ほどたった世界を舞台に、何事かに突出している(ただしひとりでは生きられない)キャラクターとなって、その生き様や世界を掘り下げていくという内容。手早く生み出される個性的なPCが、セックス&バイオレンスを地で行く物語を切り拓くRPGだった。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
インディーズ界隈では、かなり早い時期から良質なハックが登場して、ものによっては本以上の人気を博した。その代表は、D&D的なファンタジー冒険『Dungeon World』、現代に隠れ潜む若きモンスターの学園生活を描く『Monsterheats』、若手スーパーヒーローの活躍と悩みを中心に据えた『Masks』など。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
有名どころだと『KULT第4版』のコアルールに採用されている。また、去年Kickstarterで10億円を集めた、アニメ原作の『Avatar Legends: The Roleplaying Game』もPbtA。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
あと、『ザ・ループTRPG』はPbtAの影響をかなり受けており、技能、運用方法、カウントダウンなどのルールにその痕跡が見られる。
かくのように名を知られるPbtAだが、全てに共通するルール的特徴をあげるのは困難だ。というのも、オリジナルの作者が新作を出すたびにPbtAのロゴを貼るものだから、細部を定義しようがないのだ。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
『我らが王の身罷りて』にもロゴが貼られているが……次にあげるルール特徴はほとんど含まれていない。 pic.twitter.com/lTC5eGr6OC
PbtAの特徴は:
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
・プレイブック:PCの雛型、手軽に個性的なキャラ作成させつつ、PLのアイデアを引き出す。
・ムーヴ:決められた行動をとるか、特定の状況になったときに適用されるルール。様々な成り行きを生み出し、ときにPLに質問したり、難しい選択を行わせたりする仕組みが組み込まれている。
・ムーヴに触れない行動は、それまで卓で共有されている設定に基づき、どうなるかをGMが判断する。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
・たいていダイスを振るのはPLのみで、GMはダイスを振らない。PLの反応を引き出し、次の状況を動的に作るための、GMとしての基本的な応対がリスト化されている。
私感ですが、PbtAの本質は「参加者のアイデアを引き出しつつ、PL主導で即興的に物語を編むプレイスタイルに、最適化された軽量ルール&GMテクニックのセット」に尽きると思います。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
中核となるムーヴのデザインは作者のセンスに左右されるため……ハックは多数あれど、かなり玉石混交だったりします。
さて、Powered by the ApocalypseなRPGは多くのアイデアが詰め込まれていた&それなりに広く遊ばれたこともあって、多彩な派生ルールを生み出しました。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月13日
次はその中でも特に有名な、Forged in the DarkとBelonging Outside Belongingを見ていくことにしましょう(ただし今夜はもう寝ます)。
次に移る前に、PbtAのムーヴについてもう少し追記。元祖『Apocalypse World』だと、ダイス・ロールを求められた場合【能力値】+2d6を行い、合計で成り行きを決めます。概ね次の通りです。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月14日
・10以上:問題なくうまく行く
・7-9:代償を伴う成功、手落ちのある半成功
・6以下:何が起こるかをGMが決める
細部はムーヴによって異なるのですが、ポイントとして、「半成功や6以下は、事態を複雑化させ、PCの次の行動を促すもの」であることがあげられるでしょう。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月14日
一般的なTRPGだと「失敗=停滞」となることも少なくないと思いますが、PbtAにおいては失敗から状況を展開し、PCに活躍の場をもたらすのです。
ムーヴの具体的な例を、PbtA初期のヒット作である『Dungeon World』から見ていきましょう。《危機打開》では典型的な結果の分類が行われ、《射撃》ではどのペナルティを被るかを決断して、《事実の識別》では知りたいことを選択する形になってます。(6以下の記述がないのは、GMに委ねられているから) pic.twitter.com/mihYdYKuWr
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月14日
このように、非常にシンプルな処理を用いつつ、PCの取った行動や情勢とダイスの出目から、状況が千差万別に展開する……そういうデザインなのです。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月14日
なお、PbtA系は通常、難易度がありません。「難しいこと=複数の行程を要する」ので、ムーヴやダイス・ロールの回数が増え、自然と厳しくなるからです。
ランダマイザーの2d6は、あくまで本家が用いているだけで、PbtAのハックには、異なるダイス、トランプ、オリジナル・カードを用いているものもあります。成り行きを「問題のない成功」「代償を伴う成功/半成功」「何が起きるかをGMが決める」割り当て、状況を動的に展開することこそ重要なのです。
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月14日
3.Forged in the Dark
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月15日
『Blades in the Dark』をベースするRPGのこと。略称はFitD。公式サイトにてシステム・リファレンス・ドキュメント(SRD)が、クリエイティブ・コモンズ(CC-BY)にて公開されており、これを利用した自作の配布・販売が無償で行えるようになってます。https://t.co/J9QF6FloEO
元になった『Blades in the Dark』は、科学と錬金術と心霊の混在するインダストリアル・ファンタジー。舞台となるのは、太陽が燃え尽き、生と死とを隔てる門が崩壊という千年前の大破壊から復興した世界。工業化の進む大都市の片隅から、悪党一味としてのし上がるRPGです。https://t.co/z4WRV3Soo2
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月15日
去年TVドラマ化が発表されるなど、個性的な世界とアートは、それだけでも注目に値します。文章、アート、レイアウトを手がけるのはジョン・ハーパー氏。『レディ・ブラックバード』『Lasers & Feelings』『AGON』等の制作で知られ、『MarvelヒロイックRPG』にも関わってます。https://t.co/t5BrBPvOnJ
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年1月15日
(忙しさにかまけて止まっていたのを再開)
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年2月5日
Blades in the Darkのルール的特徴はざっとあげると:
・D6ダイスプールの最大出目をみて、成り行きを決め(1~3は失敗、4~5は代償を伴う成功、6は通常成功、6が複数ならクリティカル)、リスクに応じてなりゆきの厳しさが変わる(本家のBitDは3段階)
・グループで困難に挑むフェイズと、個人の目的を追求するフェイズを交互に行うことで、全体で協力しながらも個々の物語を掘り下げ、それらを絡めることで話を作っていける
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年2月5日
・個人のキャラクターシートの他にグループのシートがあり、一味のなわばり、グループ用特殊能力、本部の設備などが設定できる
・グループで協力するフェイズは、計画は最小限に留め、まずアクションに突入してから、フラッシュバック的にそれまでの準備などを描く構成
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年2月5日
・時間のかかる行動、敵方の増援、変化する状況などを、複数のカウントダウンタイマーを設置し、埋めながらその経過を管理する pic.twitter.com/NgPSsp1DYp
・悪魔の取引:ダイス・ロールの際、他PLが「その行動の結果、成否を問わずに生じる悪いこと」を提案できる(巻き添え被害、アイテムの損失、信用の喪失、負傷など)。ダイスを振るPLがこれを受け入れた場合、1つにつき振るダイスが1個増える。参加者全員で楽しく状況を悪化させる良きルール
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年2月5日
・他勢力との関係性をリスト化して、複雑な諸勢力との同盟&対立関係を描く
— ふぇる/塚越冬弥 (@feltk) 2022年2月5日
なお、今あげたのは主にBlades in the Darkの特徴であり、同システムを主幹ルールとして採用するタイトルによっては、割愛されているものもざらです。その点はご了承ください。